2016年12月1日木曜日

「古代史シンポジウム」への疑義 2

<魏志倭人伝とは>

 今日の日本の古代史関連の学会や論壇で、「魏志倭人伝」は格別の扱いを受けている。なにしろ卑弥呼問題が「古代史最大の謎」とされているわけだから、その卑弥呼のことを書いている唯一の一次資料である魏志倭人伝が尊重されるのも当然かも知れない。

 しかし、やや滑稽なことであるが、実際は魏志倭人伝は実際は魏志、ないし、それを含む「三国志」全体のごくごく一部に過ぎない。そのごく一部の文章を、場合によってはそれだけを精読に精読を重ね、一字一句の意味を万言を量して解釈を行ったり、字句の向こうにある意味を解釈しようとして(空虚な?)時間を費やしているのである。

 あくまで、魏志倭人伝は、魏志30巻、呉志20巻、蜀志15巻、全65巻のうちのわずか一巻である魏志東夷伝にあるもので、さらにその東夷伝の中にある高句麗伝や韓伝、など9つの章がある中の倭人の章のことなのである。加えて「東夷」という中華から見た蛮人(東夷、西戎、南蛮、北秋)のことを書いた唯一の巻の最後に書かれたものである。

 いわば、雑誌の「巻末閉じ込み付録」に過ぎない。